エレパレは青春という概念の結晶【映画 ザ・エレクトリカルパレーズ レビュー】
ザ・エレクトリカルパレーズとは、お笑い芸人 ニューヨークのYouTubeチャンネルにて無料公開されている映画である。
お笑い芸人?興味ない。
ニューヨーク?知らない。
YouTubeの無料映画?しょぼそう。
そう思う人もいるだろうが、本気で面白かったので是非見ていただきたい。
この作品は、かつて吉本の養成所 NSCの17期にのみ存在していたという謎の集団の謎を追ったドキュメンタリー映画だ。
ザエレクトリカルパレーズ、通称エレパレ。
エレパレはNSC17期のエリート集団で、17期はエレパレとエレパレ以外に別れていたという。
ネタ見せではエレパレのみが爆笑をとり、同期の女性芸人からもモテモテ。
エレパレは自らの力を誇示するために、オリジナルのTシャツを作り、オリジナルの歌を作った。
これほどまでに圧倒的な存在感を放っていたエレパレは、今となっては誰がメンバーだったのかすらはっきりしていない。
エレパレにいったい何があったのか、これらの噂は本当なのか。
エレパレの謎を解明するべく、NSC17期生へのインタビューを重ね、真実に迫っていく、という内容になっている。
最初は都市伝説物のミステリような感じで、徐々に謎を解き明かす楽しさがある。
最初はエレパレメンバーではない17期生へのインタビューから始まり、徐々にエレパレの中心へ向かっていく構成が非常にドキドキする。
エレパレの眩しさに慄いていたやつ、痛い集団だと馬鹿にしていたやつ、エレパレメンバーで心底楽しんでたやつ、無理やりエレパレに入れられて本当は嫌だったやつ、エレパレメンバーではないけどエレパレと仲良かったやつ。
様々な視点からエレパレを紐解いていく。
この作品の面白いところは、全員が昔の朧げな記憶を頼りに話しているというところだ。
そして、立場の違いから私情が入ってくるし、芸人なのでおもしろおかしくしようと思って盛っている可能性もある。
そうなると、それぞれの言うことに食い違いが起きてくる。
結局どこからどこまでが真実なのかはわからないのだ。
それ故に、具体的な団体名や人物名は出てくるものの、かなり抽象的であり、余白が多い。
だからこそ、別に自分が芸人でなくとも、出演者を全く知らなくても、視聴者が入り込める余地がある。
また、この作品はエレパレみたいな人になれとも、エレパレみたいな恥ずかしいやつらにはなるなよともいっていない。
だから、エレパレみたいなことをしていた陽キャでも、そういう人を影から馬鹿にしていた陰キャでも、あらゆる人がエレパレの登場人物になれる。
最終的に、エレパレを取り巻く全てがいい思い出となり、青春という概念として結晶になる。
ミステリを見ていたはずが気づいたらいつのまにか青春ものになり、爽やかな気持ちでラストを迎えているのだ。
自分はどちらかと言えばエレパレのような存在を影から馬鹿にしているようなタイプなのだが、最終的には何故かエレパレって良いなと思わされてしまった。
エレパレだった人も、エレパレじゃなかった人も、視聴者ですらも、全てがエレパレなのだ。
ぉゎ